プロフィール
| 生まれ |
1972年 |
| 子供の頃の夢 |
獣医師 |
| クラブ活動(中学校) |
なし |
| 働いている地域 |
神奈川県 |
出身地 |
東京都 |
| 仕事内容 |
動物園の動物を飼育・治療する |
| 自己紹介 |
研究肌。何事にも冷静かつ柔軟な姿勢で臨めるようになることが目標。休日は野山に入って昆虫や野生動物の写真を撮っています。 |
※このページに書いてある内容は取材日(2010年06月30日)時点のものです
仕事人記事
動物園の動物に対する飼育と治療を行う仕事

私が働いているのは、川崎市の夢見ヶ崎動物公園です。園内には63種類・約380の動物がいて、年中無休で開園しています。飼育係は13名で、そのうち4名が獣医師です。動物園によっても違うと思いますが、夢見ヶ崎動物公園では、獣医師も動物の飼育を担当しています。私も調理、給餌、獣舎清掃、観察等の飼育作業を行っています。普段はフンボルトペンギン、ヤマシマウマ、バックヤード動物や入院動物の担当をすることが多いです。

一日の作業の流れですが、診療・治療だけを行っているのではなく、実は飼育作業が中心になっています。朝は8時くらいから治療中の動物や、治療後の経過観察中の動物の状態をチェックします。8時30分から全体ミーティングがあり、一日の流れの打合せと確認をします。その後、調理場で餌を作ります。アジや鶏の頭を解凍したり、果物・野菜を切ったり。動物の口の形や食べ方に合わせて、切り方を変えたりもするんですよ。餌は一年中手に入りやすい物を使って組み合わせ、毎日同じ物を同じ量を与えるようにしています。なぜなら、動物の体調の変化が分かりやすいからです。例えば、昨日より食べなかったとか、フンの状態が違う、とかですね。その後は担当動物の獣舎へ出かけ、清掃、給餌、観察等の飼育作業を行います。その時動物にいつもと違う所はないか、異常がないかなどをチェックします。この作業が11時頃まで続きます。午後は13時から調理、給餌、清掃、観察、寝室の準備等を行い、16時から動物の収容作業を行います(動物園は16時に閉園となります)。収容後は事務所に戻って、飼育日誌、病院日誌への記帳や、治療データの入力(パソコン)などを行い、17時に一日の業務が終了となります。動物の診療・治療はというと、必要に応じ、飼育作業の合間に行ったり、緊急性により飼育作業を中断して行ったりします(動物の治療がほとんどない日もあります)。

動物園にいる動物は基本的に野生動物です。だから、身体の調子が悪くてもギリギリまで普通に行動しようとします。当たり前ですよね、だって自然の中では、弱っている状態のところを敵に見つかったら、すぐに食べられたりしてしまうのですから。だからこそ飼育作業中に動物を観察することが、とても大切になってきます。フンの状態、昨日与えた餌の食べ具合、水を飲んだ量、歩き方(動き方)、床に敷いてある藁の乱れ具合などをチェックして、おかしなところがあったら、観察の頻度を上げ、それでもおかしい場合は検査や治療を行います(緊急性のあるときはすぐに検査治療を行います)。検査や治療の時は動物を捕まえて押さえること(保定といいます)がありますが、これが大変です。どうしてかというと、野生動物はヒトのことを怖がります。つまりヒトから逃げます。触ることすら容易ではありません。ペットや家畜と違ってヒトに慣れていないのです(動物園で飼われているからといって、ペットや家畜と同じように慣れているわけではありません)。もし捕まえることができたとしても、野生動物はものすごい力があり、上手に保定しないとヒトも動物もケガをしてしまいます。また保定は動物にとって大変なストレスになり、保定のストレスで動物が死んでしまうこともあります(自然界でいうと、捕食者に捕まえられているのと同じです)。夢見ヶ崎動物公園にはヤギ(家畜)の原種と言われているマーコールという野生のヤギがいますが、30kg程度のメスでも飼育係3~4人でないと保定することができません。一方家畜のヤギの場合は、マーコールよりも少ない人数で比較的容易に保定することができます。大型の動物(ヤマシマウマやヘラジカ等)の場合はいきなり押さえることは不可能ですので、麻酔で眠らせてから保定します。ペットや家畜と野生動物が一番違うところは、「ヒトに慣れているか、慣れていないか…」だと思います。
動物の健康は、獣医師だけが守っているのではありません

飼育員さんとのチームワークは、動物の健康を守る上で一番大切なことです。動物園にはたくさんの動物がいるので、すべての動物の健康状態を把握するのは大変です。自分で足を運んで動物を観察することも大切ですが、飼育担当者とよく話をして、担当動物の情報を聞くこともとても大切です。ベテランの飼育員さんは、長年の経験を基に異常を見逃しませんし、動物のことをとてもよく分かっています。治療の時に動物を保定する場合は、動物の習性をよく知っている飼育員さんの力が不可欠です。気を付けないと、ヒトと動物が大怪我をしてしまいますしね。獣医師と飼育員との、良いチームワークが発揮できているからこそ、動物の健康が保たれているんだと思います。
人間のお医者さんとの違いは、あらゆる種の動物を治療すること

動物園の獣医師は、園内にいる全ての種が治療対象となります。夢見ヶ崎動物公園の63種類の動物が診療・治療の対象です。ここが人間のお医者さんとの大きな違いではないでしょうか。動物園の獣医師になって7年目になりますが、未だに手探りの中での治療です。なぜならイヌ、ネコ、ウシなどの家畜と違って、野生動物の適正な治療に関するデータはまだ少ないからです。薬を投薬する場合でも、とても難しいことがたくさんあります。まず投薬量というのは、その時の体重を基に計算するのですが、野生動物の体重を計測するには捕まえなければならないため、大変なストレスになります。そこで、体重を目分量で推定して投薬量を決めていることが多いです。推測が大きくずれてしまうと、薬がまったく効かなかったり、逆に効きすぎたりすることもあるので、とても難しいです。次に薬を飲ませる方法です。先ほどもお話しましたが、野生動物は捕まえることは非常に難しいため、餌に混ぜて飲ませることになります(もし捕まえることができたとしても、口をこじ開けて薬を飲ませることは容易ではありませんし、時間がかかってしまい動物のストレスになってしまいます)。ほとんどの薬は苦味がありますので、いつもの餌に薬を混ぜてもなかなか食べてくれません。毎年ヤマシマウマの蹄を切っている(削蹄という)のですが、その時に鎮静剤を餌に混ぜています。この鎮静剤はとても苦いため、削蹄前日の夕方の餌を抜いて(絶食)腹ペコにして、薬を混ぜた餌を食べさせています。注射をする場合は、小型動物では保定をして注射をします(動物のストレスにならないよう、できる限り短時間で行います)。大型動物では、保定は難しいので、吹き矢を使って投薬することもあります。今まで色々とお話ししましたが、これらはほんの一例です。治療する動物の種類に応じて、保定はどうするか、その場で治療するのか、病院に収容して治療するのか、どういう治療を施すのか等々、様々な診療・治療パターンを頭の中で考える(思い描く)ことが必要です。

先ほどお話ししました通り、野生動物は調子が悪くてもギリギリまで普通に行動しようとするので、異常が発見された時にはすでに手遅れである場合が多く、治療が間に合わず助からないことも多いです。とても憂鬱な気分になることもよくあります。動物の命が関わっているので、責任の重い仕事です。飼育の作業は重労働ですし、臭いや汚れがイヤな人には務まらないかもしれません。それでも動物が大好きでこの仕事を選んだ訳ですから、毎日、動物の飼育と治療ができることが、楽しくない訳がありません(笑)。それに飼育員さん達とのチームワークで、治療が無事に終わった時や、弱った動物を助けられた時には、この仕事をやっていて本当に良かったと思います。
始めから、動物園の獣医になれた訳ではありません

小学校の頃から動物のお医者さんになるんだ、って思っていました。動物が大好きだったからです。大学は獣医学が学べる学校(6年制)に進学し、国家試験を受験して獣医師の資格を取りました。卒業後は川崎市役所に入所(就職)しました。最初に配属されたのは動物愛護センターでした。つらい仕事もありましたが、イヌ・ネコに囲まれて楽しい職場でした。配属されて間もなく夢見ヶ崎動物公園のことを知り、野生動物の飼育・診療、繁殖等に携わりたいと思い、異動の願書を出し続け、入所6年目にしてようやく動物園に配属となりました。その後、他の職場への異動があり、また戻ってきて今に至ります。(また異動があれば他の仕事になる可能性もあります)。皆さんが動物園の獣医師になりたい場合ですが、大きく分けて2つの方法があると思います。公立の動物園で働くのか、民間の動物園で働くのかということです(獣医師の資格は絶対必要です)。公立の場合、動物園の獣医師として募集している所はほとんどないと思います。川崎市の場合を例にとると、市役所の獣医職として入所します(川崎市役所の公務員試験に合格することが必要です)。獣医師の働く職場は、保健福祉センター(食品衛生、環境衛生)、市場検査所、動物愛護センター、そして動物園などがあります。どこに配属されるかはわかりません。本人の希望もほとんど通らない場合が多いです。また同じ職場に長期間配属されることは少ないので、動物園で働き続けるということは非常に難しいです。一方民間の動物園では動物園の獣医師として募集している所が多いと思います。各自治体、民間動物園のホームページなどで調べてみてください。
日頃から動物を見て、触れて、飼ってみよう

獣医師になるのに一番必要なのは、「動物がどれだけ好きか」ということだと思います(私も動物が大好きでした。それがいつの間にか動物を助けたいという気持ちに変わっていました)。特に動物園の獣医師の場合は、その診療対象の動物種は限りなく多いので、常に勉強したり、調べたり、観察をし続けることが必要です。でも、動物が好きであれば興味が持てるし、そういった作業も苦にならないと思うのです。また動物園では環境教育活動も盛んで、来園者の方々に動物の習性や生息環境等について楽しみながら学んでもらい、動物たちが生息している環境を守ろうという気持ちを育んでいます。このようなことをできるのも動物園で働く魅力です。夢見ヶ崎動物公園でも行っていますが、動物園では職業体験ができるイベントを開催している所があります。また獣医大学生を対象に獣医実習を受け入れている所もあります。ぜひ参加して、実際の仕事がどんなものなのか、肌で感じてみてはいかがでしょうか。
取材・原稿作成:あしたね取材チーム
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