プロフィール
| 生まれ |
1955年 |
| 子供の頃の夢 |
大工 |
| クラブ活動(中学校) |
陸上部 |
| 働いている地域 |
埼玉県 |
出身地 |
埼玉県 |
| 仕事内容 |
グラウンドの芝を管理する |
| 自己紹介 |
|
※このページに書いてある内容は取材日(2006年06月15日)時点のものです
仕事人記事
芝のピッチを良い状態にしておくのが、グラウンドキーパーの仕事

ピッチ(サッカーの試合を行うグラウンド)の上をあっちへ行ったり、こっちへ来たり、しゃがんでみたり、ボーっと芝を見ていたり。そんな私の姿を見たら、「あのおじさんは、何をぶらぶらしているんだろう」と思うかもしれませんね。でも、これも、グラウンドキーパーにとっては、大事な仕事のひとつなんです。グラウンドキーパーの仕事を簡単にいうと、芝を青々と美しい状態にしておくこと。だから、ぶらぶらしているように見えても、実は、かかりつけのお医者さんのように、いつもと変わったところはないか、目で見たり、触ったりして観察していたというわけです。
水をあげたり、芝を刈(か)ったりして、毎日世話をします

埼玉スタジアム2OO2は、Jリーグの試合や、日本代表の試合も行われるような、サッカー専用のスタジアムです。だから、試合に備えて、芝はいつでも最高の状態にしておかなくちゃなりません。雑草なんかが生えて、ボールが変な方向に飛んでしまうようなグラウンドだったら、プロのサッカーにはなりませんよね。でも、芝は生き物ですから、放っておけば枯れたり、伸びすぎたり、病気になったり、虫がついたりする。そうならないように、毎日、世話をしてあげるのです。試合のない日には、まず伸びた芝を、芝刈り機で刈ります。それから水をやって、虫がついたり病気になりかけていたら、薬をまきます。さらに、水はけを保つために砂をまいたり、雑草を手でひとつずつ取ったり、肥料をまいたりもします。
試合中も、どこの芝がちぎれたか、どこに穴があいたかとチェック

試合がある日は、特別メニューです。芝を刈るのは同じですが、ストライプがきれいに出るように刈って、白いラインを引いていきます。例えば、W杯ではストライプの幅が5m50cmに決められています。それは、美しいからというのもありますが、オフサイドを分かりやすくするため。今度、日本代表の試合を見る機会があったら、よく見てみてください。ペナルティエリアは、きっちりストライプ3本分になっているはずです。試合が始まると、今度は放送席の隣にある部屋から、双眼鏡で試合を見ます。でも、これは試合を楽しむためじゃありません。どこの芝がちぎれたか? どこに穴が開いたか? と細かくチェックして、ピッチを真上から見た刈り込みのパターンが載っているマップに書いていくのです。そして、ハーフタイムを迎えると、ピッチで待っているスタッフに指示を出して、ちぎれた芝を拾い、砂と種子を混ぜたものででこぼこを直していきます。
試合の翌々日には、何事もなかったかのようにきれいな芝へ

試合の翌日にも、同じように芝生の修復をしていきます。あまりにも大きな穴があいたときは、別の場所で育てておいた芝を植えることもあります。その次の日には、もう何事もなかったかのようにきれいな芝生に戻すのです。そして、また次の試合に向けて、最高の芝へと育てていく。この繰り返しです。

ただ、これを繰り返せばいいというものでもないのが、この仕事の面白いところです。なぜかといえば、日本には夏もあれば、冬もある。晴れの日もあれば、雨の日もあるからです。埼玉スタジアムの芝は冬芝といって、夏の蒸し暑いのが苦手な芝。だから、夏の暑い時期には、いつもよりも早く、朝の4時ごろに水をまきます。そうすれば、暑くなる日中には水が引いて、蒸れずにすむから。雨が続くときには、少ない太陽の光でも光合成ができるような肥料をあげたりもします。つまり、その時々によって、世話の仕方が変わるのです。

だから、最初に言ったピッチの上をぶらぶらすることが大切というのも分かってもらえるのでは? ピッチに立ち、「今日は南風が吹いて、蒸し暑くなりそうだな」といったことを自分の体で感じる。そして、芝に触れて、ちゃんと観察することが大切なのです。そして、芝の光沢がなくなる、葉の先が白くなる、葉にスジが入るなど、いつもとちがう形状が確認されたら、「ああ、いつもと違うぞ」と思うのではなくて、「なぜ、違うのか?」と考える。そうすれば、「病気か?」「栄養が足りない?」と、いろいろな理由を考えることができます。大きな病気になる前に、対処することができるようになるのです。

「なんだか調子がいいぞ」という日が続くほうが要注意。実は、かくれた病気が進行していることもあるのです。今までも、そうやって病気を見逃したり、部分的に芝を枯らしてしまったこともありました。でも、それを克服して、美しい芝を取り戻せたときに、私は「やったぞ!」と思います。そして、もうひとつ、芝を育てるための経験と知識を手に入れることができたと思うのです。
目の前のことにひたすら取り組むと、面白くなってくる

芝の仕事をするようになって27年が経ちましたが、昔からグラウンドキーパーになろうと思っていたのではありません。モノをつくることが好きだったので、子どものころは大工になりたいと思っていました。みなさんの周りの大人を見回しても、私のように、子どものころになりたかった職業に就かない人の方が圧倒的に多いのではないでしょうか。でも、それは悲しいことではないのです。私は今、この仕事を心から面白いと思っています。この仕事に出会ったのは、めぐり合わせ。でもそうやって、目の前に与えられた仕事にひたすら取り組んでいくうちに、面白くなってきたのです。仕事とは、案外、そういうものなのかもしれません。
取材・原稿作成:あしたねスタッフ
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